2026-10-19 · Manager · 66 words · 1 citation

ベイジアンネットワーク:条件付き確率をつないで人口を作る

ベイジアンネットワーク(Bayesian network)は、複数の属性の結合分布を、矢印のある図と条件付き確率の表で表現するモデルである。例えば「男子なら自転車通学30%」という一つの条件から、条件付き確率をつないで複数の属性を持つ仮想の人を作ることへ進める。

ベイジアンネットワークの架空例

図と確率表の二つが必要

教材として「年齢層→就業状態→所得区分」という単純な構造を置く。各丸や箱がノード(node)、矢印が辺(edge)。矢印の始点は終点の親(parent)と呼ぶ。生成するときは親の値を先に決め、その値に対応する確率表から子の値を抽選する。

今回の確率はすべて架空である。若い層60%、年上の層40%。若い層なら就業80%、年上の層なら就業30%。就業なら所得基準未満20%、非就業なら70%とする。それぞれ残りの確率は反対の区分へ割り当てる。

一人を作るには、まず60%の抽選で年齢層を決める。若い層に決まれば就業確率80%を使う。就業に決まれば所得基準未満確率20%を使う。ここでは1人を作るたびに各段階で別の乱数を使う。

一つの組み合わせの確率を求める

若い層・就業・基準未満という組み合わせの確率は、0.60×0.80×0.20=0.096、全体の9.6%。100人を独立生成した場合、その種類の期待人数は9.6人になる。一回の抽選で9.6人になるという意味ではない。

P(年齢, 就業, 所得)
 = P(年齢) × P(就業|年齢) × P(所得|就業)

この式は今回の図に対応する。一般の三変数では最後がP(所得|年齢,就業)となり、年齢を省くにはモデルの仮定が必要である。この教材は「就業状態が同じなら、所得区分の確率を年齢で変えない」と仮定している。現実には年齢も関係するかもしれない。その場合は年齢→所得の辺を追加し、年齢と就業の両方に対応する確率表を用意する。

つまり、単に矢印を描くだけでなく、どの関係を省略したかもモデルの内容になる。ベイジアンネットワークは有向非巡回グラフ(DAG)を使い、矢印をたどって元のノードへ戻る循環を含めない。

確率と構造はどこから得るか

今回は理解のため手で決めた。実際には二つの学習を区別する。構造学習(structure learning)は、どの属性を結ぶかを決める。パラメータ学習(parameter learning)は、決まった構造の確率表をデータから推定する。

例えば標本の若い層100人中80人が就業していれば、単純な頻度推定は80/100=80%。ただし標本重み、少数群、未観測の親の組み合わせ、別地域への移動を考慮する必要がある。親を増やすと必要な条件別データも増えるので、辺を多くすればよいわけではない。

SunとErathの2015年の研究は、シンガポールのHITS2012調査を参照人口として扱い、一部標本から人口を生成する方法を比較した。bnlearnのtabu searchで構造を探索し、構造と確率を学習して生成する。IPFとの比較では入力情報も異なるため、単一の成績を全条件での優位性へ一般化しない。調査データを既知の参照人口とする評価であり、シンガポール全員の個票を得た研究ではない。[1]

公開コードではどう生成するか

pgmpyのBayesianModelSampling.forward_sampleを読んだ。コードは親が先になる順番でノードを処理し、get_cpdsで確率表を取り、既に生成した親の値で該当する条件を選んで抽選する。親がなければそのノードの無条件の確率を使う。[2]

今回、pgmpy自体の実行はしていない。同じ三段階の考え方をPython標準ライブラリの短い教材で実行し、8種類の組み合わせの確率の合計が1、指定経路が9.6%であることを検算した。さらに架空の人物を10,000件抽選した。現実データからの学習や、論文の成績再現ではない。

矢印と介入は別に確認する

今回の矢印は、確率の依存関係を表す。データ上の関係だけで「仕事を与えれば、この確率で所得が変わる」という介入効果は証明できない。就業している人の所得分布と、ある人を就業させた場合の所得変化は別の問いである。

マネージャーでは人口生成の比較候補として学ぶ。生成した人口が地域の集計に合うか、未使用の組み合わせが合うかを別に評価する。AaruやSimileがこの具体的なネットワークを使用するという証拠はなく、両社の内部方式とは区別する。

[1] Sun / Erath, A Bayesian network approach for population synthesis https://lijunsun.github.io/files/papers/2015-TRC-BN-Population.pdf 。今回3.1–3.3と実験設定を確認。

[2] pgmpy公開コード https://pgmpy.org/_modules/pgmpy/sampling/Sampling.html 。参照したのは公開devソースであり、独自の性能検証ではない。

条件付き確率とネットワークは同じものか

条件付き確率は「若い層なら就業80%」のような、条件の下での確率である。ベイジアンネットワークは、変数の図と、その図に対応する確率表を組にして結合分布を表すモデル。条件付き確率が部品、ネットワークがその組み合わせという関係であり、二つの名前が同じものを指すわけではない。

人口生成についてIPF・ベイジアンネットワーク・LLMを比較しているのは、この講座で選んだ代表例である。分野全体をこの三方式だけに分類する意味でも、市場での主要三方式という意味でもない。IPFは調整アルゴリズム、ベイジアンネットワークは確率モデル、LLMはモデルの一群で、分類の階層も異なる。VAEなどの生成モデルや組み合わせ最適化もあり、複数を組み合わせられる。

IPFとipfnも区別する。IPFは手法名、ipfnはその手法を利用できるPythonライブラリ名である。

部品とモデルの違い

補足図の確率表もすべて架空値であり、前の二年齢区分の教材とは別の説明例である。部品と全体の関係を示すための図として読む。

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